021 柿の種が好き (前編)
『刺激物との付き合い方(前編)』
1.
『エクソシスト』を初めて見た。
月並みながら、ホラー映画はシンプルに怖いので敬遠しがちなジャンルで、人生でも数えるほどしか見ていない。
現在、見ていない名作映画を見まくろうという試みをしているのでその過程でエクソシストも見てみることにした。
結果として、美術・時間配分・脚本・演出・構図などすべてのバランス感覚が良く、美意識が高く、今見ても存分に楽しめた。
例えばポスター写真でも使用されている、霧に包まれた邸宅に、悪魔祓いをするためにメリン神父が訪ねてくるシーン。これは『The Empire of Light』という絵画をイメージして画作りをしたらしい。
The Empire of Light - Google 検索
たしかに、『The Empire of Light』の一部をクローズアップして再構築したような構図になっている。
自分が好きなものを、幅広くかき集めて再解釈するアンテナの張り方が素敵だと思った。
また、秋の終わりの風景の撮り方が、低くなり始めた気温や澄んだ空気まで伝わってくるぐらいに美しい。その上、序盤は幸せな家庭内の様子が色彩豊かに上手く描写されていた。
その美しく幸せな様子と、リーガンが拷問のような検査を受ける病院の器具や院内の無機的な感じ・悪魔に憑かれた後のおぞましい奇行などの対比が映えていると思った。
数えるほどしかホラー映画を見ていないが、恐怖やグロテスクさを鮮烈に描くためには、ぶち壊すための幸せが上手く描けている必要があると改めて思った。並外れて上手かった。
SFXも、2001年に出たディレクターズ・カット版で見たからか、特に古さも感じずちゃんとゾッとする場面が多かった。過剰すぎて笑える場面もあったけど。
エクソシスト以降、グロテスクさを強調するホラー映画が増えたという記述を見たが、その元祖は驚くほどソリッドなセンスを持っていて、時を経ても朽ちない名作だった。
ただただビックリ連発だったり、ただただグロいホラー映画を見るぐらいだったら、ビックリ箱から死体写真が出るようなオモチャ作って見てればいいじゃないと、俺ー・アントワネットは思うわけだが、こういう美意識の高いホラー映画ならバンバン見たいと思った。(知ってたら教えてください)
2.
今年の夏、としまえんに行った。海パンを持っていないのでプールには入らず遊園地で遊んだ。レンタルは、いくらクリーニングしているとはいえ気が引ける。
遊園地の絶叫マシンの類も、ホラー映画と似ていて、怖いから人から誘われない限り能動的には乗らない。
乗ってみるとだいたい楽しくて大はしゃぎしている。
としまえんでバイキング(船型の乗り物が大きく前後にゆれる、巨大ブランコ的なやつ)に乗った。数年ぶりということもあり乗る前は恥ずかしい話、緊張が隠せなかった。
自分の僅かな経験から言えば、としまえんのバイキングは他の遊園地に比べても角度がとんでもない。体感では殆ど垂直になっていてゾワッとした。
「これだけ絶叫してくれたら絶叫マシン側も絶叫マシン冥利に尽きるし嬉しいだろうな」と思うぐらい絶叫していた。
ホラー映画を見るのが好きな人は、「安全が約束された恐怖」を目の当たりにすることで、アドレナリンがドバドバ出て、それに伴いドーパミンによって依存性のある快感がもたらされているから何度もその刺激が欲しくて見てしまう、という記事を読んだ。
なぜ私たちは、後悔するのにホラー映画を観るのか? | TABI LABO
激辛料理も辛いものの刺激・痛みで、体がピンチに陥っていると認識してアドレナリン→ドーパミンが出るから、辛い物好きは依存しやすいのだそうだ。
きっとバイキング含めた絶叫マシンも同じ理屈だ。結局、終わった後はアドレナリン→ドーパミンが出て、もう一度乗りたくなっていた。
(が、友人夫婦の2歳の子どもの面倒を見るのも普段しない経験なので、下で子どもを見てるから乗ってきな、と言った。火が着いたように泣き出したらどうしようと思っていたが、数分カバオくんの物まねをしたり、頃合いを見てベジたべるをあげたりしてことなきを得た)
一回転する系のジェットコースターは無理というポリシーを持っている。下から一回転している様子を見上げてゾッとしているだけで、乗ったことはない。頭の中のイメージで敬遠している。
きっとこれだって乗れば大はしゃぎしているはずだ。
(続きます)