024 視力検査が好き

『視力検査 2.0』

 

 僕の特技・自慢・チャームポイントの一つに「視力が良いこと」がある。

万年メガネ・コンタクト暮らしの人には悪いが、子供の頃からこと視力に関しては困ったことがなく、街では遠くの看板の文字なども裸眼で見ることが出来る。目だけ生まれつき今までめちゃくちゃ良い、っていうのもバカっぽくていいなあと自分で微笑ましく思ったりするので、たぶんチャームポイントであろう。

 

 なので、定期検診などの項目にある視力検査が好きである。特技を披露して数値化されている、みたいな気持ちになり、得意になって(ムキになって)やってしまう。

視力検査のために、前日は16時以降一切電子機器や電気の類を見ず、アントシアニンを直接静脈に注射し、目薬の蒸し風呂に入り、朝は新井薬師の目の神様にお祈りしてから行く…みたいな努力(もとい奇行)を一切せずとも、今のところは毎年1.5か2.0をキープし続けている。

毎年結果を見て「よし、ほらね、やっぱり」と心の中で誇らしげに喜んでいるが、自分から言わないと、これは誰にも褒めてもらえない。

 

 しかし、なぜ視力検査の最高成績は2.0なのだろうか。あまつさえ、受ける視力検査によっては、最高成績が1.5のこともある。

「視力2.0」はなんとなく、最近言われ始めている「お金2.0」とか「労働2.0」のような、新書のタイトルに使われているワードみたいで最先端感はあるが、

毎年自分の視力が良いことの確認とともに、アスリート気分で視力検査に臨んでいる身としては、最高成績(あえて成績という)が2.0よりもっともっと大きいほうが、日頃から視力を保とう・上げようとするモチベーションが高まるのではないか、と素朴に思った次第だ。

 最高成績が更に大きい値であれば、小さい値で視力に難儀している人たちの苦労に対する理解も深まるのではと思う。

 

 そこで例えば、視力の最高成績が100億だとしたら、めちゃくちゃモチベーションが上がるだろうか、と想像した。

多分、今まで2.0が天井だと思っていた自分は、初回の視力検査で、8億8721万4233/100億とかの数値になって、意外と低いなと思うかも知れない。あるいは、想定だとしてもこの数値は全くうぬぼれで、34万200/100億です、と書かれるかも知れない。

 

 数値のケタがケタだけに、もっともっと視力検査がスポーツ感覚・バトル感覚になり、全国ランキングとかも出来始めるだろう。

全国ランキング1位の「☆ユゥ君 甘党☆」さんは99億9214万2007/100億ぐらいの視力で、全国大会で有名人的な扱いをされている。何事も極めれば一芸になるもので、「日本一目がいい男」としてメディアに引っ張りだこになり、視力検査でメシが食えている。

地方のお祭りの営業では、お祭り会場の入り口から、出口にあるランドルト環の方向を当てるパフォーマンスでいつも「会場中がオォ~!!」と沸く。目のメンテナンスを忘れなければ、それだけで20年は食える。

 

 次第に、アントシアニンや特殊な目薬が課金アイテムとなり、その一方で無課金でどこまで出来るか挑み始める人も出てくると思う。

 一方では不正もあって、片目隠す黒いやつを特殊な加工にして、実質両目で挑んだり、審判(視力検査の検査員)を買収して、全国ランキングで99億9999万9999/100億とかの不自然な数値を出したやつが、総避難されて視力検査界から審判ともども追放される展開まで見える。

 

 …やっぱりスマホゲームのシステムにすらついていけていない(チュートリアルで大抵めんどくさくなって辞める)自分に取ってはついていけなさそうな世界だ。

ジンバブエドルのようにどんどんインフレしていって価値が相対的に下がっていくかもしれない。リヤカーにお金をつんでパンを買いに行かなきゃいけない世界の視力検査版になってしまう。どういうこと?

 

 それに、例えば視力8200万と、視力8200万1の、実生活での見え方の違いがどの程度あるのか全くわからないだろう。

 普通のスープカレー屋は「辛さ0~100番で選んでください」ぐらいのシステムなのに、札幌のあるスープカレー屋さんが、得意げになって1000番まで頼めるようなシステムにしたり「今度ね…3000番まで頼めるようになったんですよ」とドヤ顔で言ったりしていたのを思い出した。

そうなったら、1200番のカレーと1201番のカレーの辛さの違いは食った人にわからないし、1200番と1201番を逆に出しても、もはや店主ですら気づかないと思っていた。たしかその店は潰れた。それの視力検査版になることうけあいだ。

 

 やっぱり視力は2.0までいい。ダイハード4.0みたいでカッコいい。じゃあせめて4.0にしてよ…と結局あきらめきれない。

 

追記:調べたらすっごい細かい、視力の数値の理由とか基準のページがありました。数字に弱すぎて全然頭に入ってこなかったので分からずじまいでした。

https://www.nidek.co.jp/eyestory/eye_5.html

http://www.skk-health.net/me/02/0202.htm