033 イグノーベル賞が好き

『”イグ・ノーベル賞の世界展”を見て』

 

1.

 東京ドームシティで行われている『イグ・ノーベル賞の世界展』に行ってきた。

イグ・ノーベル賞の世界展 | Gallery AaMo | 東京ドームシティ

 

 イグノーベル賞とは、ノーベル賞のパロディで「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に与えられる賞として1991年に設立されたもの。(詳細はwikipediaに詳しいです)

イグノーベル賞 - Wikipedia

 

 日本人が受賞した中で代表的な研究は、2016年の『前かがみになって股の間から後ろ方向にものを見ると、実際より小さく見える「股のぞき効果」を実験で示した研究に対して』や、

『ハトを訓練してピカソの絵とモネの絵を区別させることに成功したことに対して』など、まさにイグノーベル賞!という、はたから見れば下らない内容を、しっかりと学術研究として確立させているものが多い。

 

 さらに、イグノーベル賞は時々アイロニー的に賞を贈ることもあって、1997年には、あの”たまごっち”が『数百万人分の労働時間を仮想ペットの飼育に費やさせたことに対して』という名目で受賞している。

 

 このように日本人が数多く受賞しているということもあり、以前から長らく興味を持っていて、電車の中吊りでイグノーベル賞展が開催されると知り、石川遼くんばりのガッツポーズをした。

 

2.

 我々が訪れたときは、週末ということもあってかめちゃくちゃ混んでいた。

「イグノーベル賞に興味ある人、こんなにいるんだ…」というのが率直な感想だった。東京ドームシティ内ということもあって、たまたまやってるから物見遊山的に見ていこうという人もいたのかもしれないが。

 

 序盤にはイグノーベル賞の歴代トロフィーの展示などがあり、日本人受賞者の所蔵品も飾ってあった。

最初は一応科学賞らしく、トロフィーも生物を模したりそれっぽいものだったのだが、徐々にふざけていっておもっちゃっぽい作りになり、近年のものは『12時のメモリだけ5分多い時計』の形のトロフィーなどだった。

「こういう時計があったら、12時前だけ5分多く数えたい時に便利かもしれないじゃん!」という理由で作ったらしく、イグノーベル賞の精神性を現している。

 

 後半は歴代の研究のパネルが所狭しと並べられているのがメインだった。どれも本当にユニークな研究ばかりだった。ユニークって言葉あんまり使わないけど本当にユニークだった。

下ネタが35%ぐらいの印象だったが、それ以外の研究もなるほどと思った。

 

これは過去に受賞対象になった、おならを肛門のところで封じ込めて、周りに臭いを行き渡らせないパンツだ。

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 「封じ込めたら、パンツ脱いだらモワァ~って全部解き放たれて自分が全部くらうってこと!?!?」と思ったが、脱臭炭でろ過する層などがパンツについているらしく、脱いだときには無臭らしい。ホッ

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 日本人受賞者の中で『ハトに嫌われた銅像の化学的考察』という、「ハトが寄り付く銅像・寄り付かない銅像」を化学的に研究し受賞したものがあった。

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 結果的に、ヒ素が入っていることが嫌われるトリガーになっているようだったが、こんなこと疑問に思っても化学的に研究しようと思わないし、結果やってみて突き詰められることがすごい。

 

 虫に刺されたときの痛みをランク分けするために、78種類の虫に実際に刺され、ミツバチを基準にしてランク付けしたという狂気の研究もあった。

もっと狂気だったのは、その相方の人が、体の部位25種類を虫に刺させて、どこが最も痛いかを調べ、こちらも受賞したということだ。

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 「一番痛いのが、鼻の孔、上唇、ペニスだった」って記述を見て、3つ目当たり前だろ!刺さなくても目に見えてるわ!と思ったが、実際はペニスより鼻の孔のほうが痛い可能性も否定できないので、実験するしかなかったのだろう。涙ぐましいし、下半身がキューッってなる。

 

そして、その二人が撮影した、計測装置とバッタの写真が、テクノバンドのジャケットのようだった。

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たまごっちの受賞パネルの近くに、歴代たまごっちを飾ったショーケースがあり、意図せずとても懐かしい気持ちになった。(僕が6歳のときにいとこから借りたたまごっちを盗まれた話は『たまごっちが好き』の回があればそのときに)

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 また、胎教のために、妊婦さんの体内に直接入れて胎児に音楽を聞かせる『Babypod』という音楽機器の研究も受賞していた。

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思いついたとしてもやろうと思わないし作ろうと思わない!!体内にいれる仕組みも「それしかないけど…」とは思うけどやっぱりおぞましくて笑ってしまった。

 

 このような展示について、実際の映像や写真、発明品については実物などを交えてかなりの数紹介されていた。全部見終わるまで2時間半ぐらい居られた。

ある研究について、実際に体にハーネスをつけて体験できるブースなどもあり驚いたし面白かった。

今週末までやっているようなので、知的好奇心旺盛な方は是非行ってみてください。

 

3.

 wikipediaにも書いてあるのだが、日本人とイギリス人が多く受賞しているようで、その理由について、イグノーベル賞創立者のマーク・エイブラハム氏は「多くの国が奇人・変人を蔑視するなかで、日本とイギリスは誇りにする風潮がある」と語っている。

 

 「日本人は同調圧力が強く、はみ出し者に厳しい」ということをよく言われるが、それは”中途半端な奇人・変人”に対してのものなのではないか。

食やアートなど日本文化の発展の経緯を考えても、偏執狂的なこだわりを持って、あまりに途方もない・傍から見ると砂かみ作業に見えるような積み重ねや研究の過程を経て発展しているものが多いと思う。

そこまで突き詰めると”スタンダード”になるし、”大発見”になるし”文化”になる。突き詰めた奇人変人は、同調圧力を越えて愛されている。

結果的にイグノーベル賞を受賞した研究についても、そのような偏執狂的な過程を経て結実したものが多かったのが、同じ日本人として誇らしかった。ナフリスペクト

 

 イグノーベル賞の授賞式は、かなりコント的要素も多く、毎年大盛況でチケットが売れまくるらしい。(実際の映像も流れていたが面白かった)

第四回ぐらいで異議申し立てがあり、終了させられそうになり頭を悩ませたそうだが、結果今日まで続いている。

 大人が集まってバカなことをやっているのに対して、異議申し立てするほうがよっぽどの馬鹿だと思うが、バカも突き詰めてやり続ければ、そういう文句言う馬鹿を「あいつらバカすぎるからもう文句言ったりするのやめよう…」「…理解できないから近寄るのやめよう」というバカパワーで撃退できるんだなあと感じた。

 

 自分がイグノーベル賞研究をやるとしたら「2週間前に決まっているイベントとかがあると三日前ぐらいから面倒くさくなるのはなぜか」を研究したい。これはバカが足りなすぎるから他を探しておきます。バカ面下げて。