052 Berryz工房の『なんちゅう恋をやってるぅ YOU KNOW?』の歌詞が好き <上>
1.『はじめに ~ハロプロと私~』
ハロー!プロジェクトが好きだ。
全くピンと来ない方には「モーニング娘。がいるところ」と説明する。そこに所属するアーティストたちが好きである。
ハロプロ好き歴は小学4年生の頃に始まり、当時いわゆる『黄金期モーニング娘。』にハマって、最新曲や過去の曲、出演番組までくまなくチェックしていた。
中1になってリアルタイムで追うことはなくなったが、時々モーニング娘。の楽曲は気にして聞いていた。
途中完全に離れた時期を経て、2010年につんく氏の『つんく♂ベスト作品集(上)「シャ乱Q~モーニング娘。」~つんく♂芸能生活15周年記念アルバム~』という、上下巻8枚組のコンピレーションアルバムを借りて、そこから愛聴し続けていた。
昔聞いていた曲の懐かしさと、改めて聞いてわかる曲の作りの凄さ+聞いたことのなかったマニアックな曲まで趣向が凝らされていることにかなり感動した。
2015年ぐらいに℃-uteのパフォーマンスやルックスのレベルの高さに衝撃を受けて、℃-uteまわりから徐々ハロプロ好きに復帰し、2018年現在は新参者ながらハロヲタを自認している。
このように途中、断絶している時期はあれど、折に触れてハロプロの楽曲とは度々接していて、三つ子の魂百までじゃないが、黄金期モー娘。のように個性が集合してワイワイしているような超広義の『ハロプロ的なもの』がずっと好きだった。
しかしながら、今まで好きなハロープロジェクト関係のことを書けなかったのは、今年で20周年という歴史・そのライブラリの膨大さに「一体何を語ればいいのか」と立ち尽くしてしまったのと、
ネット上で目にするハロープロジェクト論はかなり多岐に渡っていて、曲についてめちゃくちゃ詳しく分析しているブログなどがあるので、わざわざ自分が書くことがない…と思ったからだ。
逆にニッチなことを書こうにも「ハロプロメンバーの字のクセ」まで語られているまとめ記事などがあり、もうわざわざ喋ることがないと思ってしまった。
今回それを承知の上で、自分のハロープロジェクト好きを語りたくなった。
ハロヲタには、ハロープロジェクトの”曲”をメインで好きな『楽曲派』など、色々な流派がある。
僕は『楽曲派』見習いで、20周年の歴史が織りなす人間ドラマが好きな『大河ドラマ派』を自称している。
まだまだ勉強中の身ではあるが、『楽曲派見習い』兼『大河派』としてハロープロジェクト・ひいてはつんく氏の作詞作曲の魅力を伝えたく、今回はBerryz工房の『なんちゅう恋をやってるぅ YOU KNOW?』の”歌詞”にフォーカスして、好きを語る。
2.今回取り上げる『なんちゅう恋をやってるぅ YOU KNOW?』について
『なんちゅう恋をやってるぅ YOU KNOW?』は、ハロープロジェクト内のグループ、Berryz工房の7枚目のシングルで2005年リリースの曲。
Berryz工房は、2002年に行われた『ハロー!プロジェクト・キッズオーディション』で、27,958名の応募者の中から合格した15名のうち、選抜された8名で結成されたグループである。
全くピンと来ない方にも、あの”ももち”こと嗣永桃子が在籍したグループと言えばわかってもらえるかと思う。
この曲のリリース当時は、最年少の菅谷梨沙子11歳、最年長の清水佐紀でも13歳と、メンバー全員が小中学生だけで構成されているグループだった。
当時、今よりずっと「アイドルを推す(応援する)」ことが一般的ではなく、どちらかというと偏見を持たれていて”ある層の男だけの世界”のように扱われていた時代に、小中学生のみのグループを売り出そうとすることは、困難の連続であったことは想像にかたくない。
90年代後半のSPEEDの国民的人気なども踏まえて、おそらく「同年代の小中学生の人気も取り込もう」という狙いも事務所側にはあったのではないだろうか。
しかしながら、当時小学生だった自分でさえ、後の℃-ute・Berryz工房となるハロー!プロジェクトキッズ加入時の特集を見たとき「なんか自分と同世代の子供が入ってきたな…」と思ってしまい引いて心が離れてしまった。
(今から思えば勿体無いことであるが、少年から大人になろうと必死だった自我の芽生えの時期だったし、後にこの人達が超カッコよくなることも知らないのだから、仕方のないことだ)
ネット上にある伝承を見ても、当時Berryz工房はやはり「ロリコン御用達アイドル」のような扱いをされてしまっていることもあったようだ。
それでも、この曲の一つ前のシングルの『スッペシャル ジェネレ~ション』はオリコン7位となって後に代表曲の一つとなった。
その次作のタイミングでリリースされたのが『なんちゅう恋をやってるぅ YOU KNOW?』である。
当時のつんく♂氏のライナーノーツを読むと、
前作「スッペシャル ジェネレ~ション」もオリコン初登場7位となりまして、 名実ともに、ここのところぐんぐん伸びてきていて、プロデューサーとしても、超楽しいですね。
さて、最初小学生だった彼女達も、中学生がどんどん増えてきております。 モーニング娘。でいいますと、かつて、福田明日香や後藤真希が入ってきたときが中学2年生。 立派に歌手として活躍し、結果をだせる年齢なんですよね。
と書いてあり、ただの小中学生のアイドルグループとしてではなく、実力派ボーカルグループとして歌いこなして欲しいという気持ちで作曲していることが伺える。
これはハロープロジェクトの作曲やプロデュースに一貫しているコンセプトで、現在までモーニング娘。’18や℃-uteを始めとして、実力派の”アイドルが憧れるアイドル”が数多く生まれている。
その上で、作詞の面では
歌手として張り切っている彼女達に、 「どうしても、好きな人に自分をアピールしきれず、自分の中でじれったさを感じている」ような、 しおらしい女の子を演じてもらいたかったので、そんなキャラクターが登場する歌詞にいたしました!
「 好きな人が、強くってバスケがうまくって、ちょっと強引で、 そんな人を体育館で思いっきり声をあげて応援している」 そんな彼女達を想像ください!
と、小中学生らしい描写を盛り込んだ、ある種の「当て書き」の詞であることも記載されている。
3.当て書きの天才、つんく♂
つんく♂さんは、ハロプロメンバーのキャラクターやパーソナリティーを考えて、その人に合った「当て書き」ソングを書くのが非常に上手い。
それぞれの人物の背景や抱えているであろう悩みや苦労まで、想像して歌詞にバシッと当てはめてしまうところが素晴らしい。
あてがきされた曲をメンバー本人が歌う時に、本人のキャラクターや心情と同期されて曲と一体になる様子に、感動を禁じ得ない。
メンバーが卒業するときの曲などは押しなべて素晴らしく、感動を誘うフレーズが随所に散りばめられている。
つんく♂氏の元で育ったメンバーが「つんくさんはお父さん」と異口同音に言うのも頷ける。
Berryz工房についても例外ではなく、メンバーが小中学生だった当時の曲は、小中学生ならではの恋愛事情や心情を描写した歌詞が多く見られる。
それを当時30もとうに過ぎたつんく♂氏が書いているということがスゴイ想像力だ。
そのリアリティが異常で、女子にとっても”恋愛あるある”レベルまで高められているクオリティを称して「つんくの中には女子中学生が住んでいる」と語られる。
これを単に「気持ち悪い」と取る人は、敬遠してしまうだろうが、個人的には、歌う人のパーソナリティーに寄り添った作詞がここまで出来るとは…と圧倒される事が多い。
Berryz工房の場合、その芸歴の長さ故に、メンバーの成長に伴って、大人っぽい歌詞が増えていったり『普通10年アイドルやってらんないでしょ?』というBerryz工房しか歌えないタイトルの曲が作られたり、あてがきソングの名曲も多数生まれた。
ハロプロ大河ドラマ派としては、そこに歴史の重み・Berryz工房とつんく♂氏の絆を感じて感動してしまう。
また逆に、幼いメンバーに、遠くかけ離れた大人の恋愛ソングを歌わせたりすることもある。
これも、普段あてがきが上手く出来ているからこそできるカウンターだと思う。(あぁ!の『First Kiss』など)
更に、こういった歌っている当時の年齢とかけ離れた曲を、大人になったメンバーが改めてカバーして歌うときに、その歴史に感動してしまう。これが『大河ドラマ派』としてはツボ。
このように、
- 当て書きソングがハロプロの多面的な歴史の一角を彩っており、
- 特に、2014年まで総合プロデューサーを務めていた、つんく♂氏作詞作曲の当て書きソングは、メンバーの苦悩や長所を近くで見ていることもあり鮮やかで、歌唱者との同期性・親和性が高い
ことをここで述べておきたい。
(続きます。一本の記事にするの無理だった!!!)