066 調味料を買うのが好き(だが、使い切れない!) <下>

(↓前回からの続きです)

yanakyo.hatenablog.com

 

『使い切れない調味料』(後編)

 

3.

 「珍しい調味料・かつ滅多に使わないから使い切れない調味料」の、上位ランカーに君臨するのが、スイートチリソースではないか。

たまたま、カルディ的なところやジュピター的なところや成城石井的なところで、生春巻きを見かけて「たまには生春巻きいいじゃない」と思い、あわせてスイートチリソースを買っておく。

生春巻きにつけりゃそりゃ美味しいさ。けれど、それ以降の使用方法、ほとんど思いつかないですよね!?

 

 そして結局、スイートチリソースも、後に買い足された、高菜漬け・お得用のソーセージ・グレープフルーツなどに追いやられ、自然と冷蔵庫の奥の奥の奥のほうに隠居してしまう。

年末に冷蔵庫の大掃除をしているときに、スイートチリソースが発見されて「そういえばあったな…」と、彼と出会った成城石井の風景まで思い出す。

 

 ここで「スイートチリソース、生春巻き以外にもう使わないし、生春巻き次食うのいつかわからないし、捨てちゃおう…」となる人が全体の半分。

あとの半分の人は、「スイートチリソース レシピ」で検索して、何とか消費方法を考える。

大体出てくるのはエビチリですよね。でも、エビチリなんて、最近売ってる日本ハムの既成品でレンジでチンしたやつとか、スーパーで売ってるお惣菜のやつのほうが絶対美味しいと思う。

しかも、スイートチリソースの消費のためにエビを買うよりも、既成品やお惣菜のほうが価格も安かったりするのでやりきれなさがある。

 

 エビチリ以外にもスイートチリソースの使い道は沢山あることだろう。

しかしながら、「スイートチリソースの代表主演作=エビチリ」以外の料理にスイートチリソースを入れると、素材の味を凌駕するほど全体がスイートチリソーススイートチリソースしすぎてしまい、

ベトナム生まれベトナム育ちでない、生粋の日本人のアタクシたちにとって、馴染みのないスイートチリソースの味には、どうしても異物感を覚えてしまう。

 

4.

 さらに、「スイートチリソース レシピ」で検索して”調味料を消費するため”に作った料理は、作って食い終わった後も、なんとなく「あ~美味しかった」よりも「よし!消費出来た!!!」感のほうが強く、満足感より達成感のほうが勝ってしまうように思う。

 

 その一方で「捨てるのも忍びないし…」感も立ち上る。

 スイートチリソースを作ったスイートチリソース農家の皆さんにも申し訳ない。

 

 スイートチリソースの収穫は6月がピークで、土作りや種まきは、3月から行われる。

 無農薬・化学肥料無使用で、毎日の水にまでこだわった環境づくり。厳しい温度管理、すべての苗の状態を事細かにチェックするなど、涙ぐましい努力の末、5月にはスイートチリソース畑一面に美しいスイートチリソースの花が咲く。

そこから一ヶ月、更に丹念な品質管理のもと、すくすく育ったスイートチリソースの苗たちを刈り取り、穂の先にある実を収穫していく。

 

 収穫した実は冷暗所の倉庫で一ヶ月保管され、寝かされる。この過程で辛さがまろやかになり、スイートチリソースの核である「スイート」な味わいが生まれるのだ。

農場から出荷された後、工場で実の一つ一つがじっくりと液を抽出され、殺菌消毒したビンに詰められると、ようやく、スイートチリソースとして店頭に並ぶ。

 

 先代から家業を引き継ぎ、長年スイートチリソース農家を営む、熊本県の与田豊さん(56)は

「すいち(※スイートチリソースのこと)が畑で作られるって、今の若い人は知らないみたい。

 他の作物に比べて栽培も難しいんですよ。うちみたいにノウハウがある農家だと、外からは簡単に見られがちなんだけどやっぱり難しい。けれど、やっぱり美味しい春巻き食べてもらいたいじゃないですか。そういう部分で、責任を持ってやってますね」と、語る。

日本に現存するスイートチリソース農家は、今では与田ファームただ一つだ。

 

 ここまでこだわって作られたスイートチリソースを、使い道がないから・消費するためのレシピは面倒だからとみすみす捨てることが出来るだろうか?

ならば最初から買わなければいいのか。一体どうすればこの問題は解決できるのだろう。

 

5.

 この「消費できない調味料」問題について、僕なりにアイデアを考えた。

 現代では「滅多に使わないわりに維持費が高い」などの理由で”若者のクルマ離れ”が叫ばれていた状況から、登録を行った会員間で、自動車を共同使用する「カーシェアリング」が一般的になった。

それにヒントを得、めったに使わない調味料をシェアする「調味料シェアリング」のシステムを設けるとどうだろうか。

 

 「今日ちょうど生春巻きを食いたいけど、スイートチリソース買っても余しちゃうからな」となれば、街中に設置された”調味料スタンド”に行けば、その場でスイートチリソースをかけることも出来るし・あるいはレンタルして家で使用できる。

調味料スタンドでは、常時130種類の調味料を取り揃えており、基本会員では80種類・ゴールド会員は130種類すべての調味料を定額で使用できる。

また、利用者が多く調味料の消費サイクルが早いため、いつも新鮮な味で食べられる。

 

 これからは調味料もサブスクリプションの時代だ。

 街中に点在し、既にインフラの一部のようになっているコンビニのように、このシステムが浸透して、調味料スタンドが多く作られれば、めったに使わない調味料を求める人・調味料の消費に困っている人・果てはスイートチリソース農家の与田さんまで、皆の生活を変えられるかもしれない。これはビジネスチャンスだ!!!革命だ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ノイローゼだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 小津安二郎の映画で描かれている昭和の、お醤油が切れちゃったから隣の家庭に借りにいくシーンのように、「あら、スイートチリソースがないわ。お隣にあるかしら」って借りにいけるぐらい、ご近所付き合いがあれば全部解決なのにな。

現代の日本では、それが出来ないから調味料が余るのかも。スイートチリソースが余ってしまう冷蔵庫にこそ、現代日本が抱えている、コミュニケーション不足の問題が隠れている!?!?!?!?!?

やっぱりノイローゼ気味なので、ちょっと横になります。

 

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