093 遊戯王カードが好き(だった) <上>

『にんていカードの思い出』 -1-

 

1.

 小学生の頃、遊戯王カードが全国的にブームで、北海道の片田舎だったわが町にも、遊戯王カードの大ブームが訪れた。

収集・トレード・バトルはもちろん、僕らの学年では、遊戯王カードのチームを作ってチーム同士で5対5の対抗戦を行うものもいた。

 

 熱心なやつは、めちゃくちゃカードを買い込み、「2軍」や「3軍」のデッキまで作ったりしていた。

 今でも疑問なのだが、遊戯王カードの2軍・3軍って、プロ野球の2軍・3軍と違って、カードが自主的に努力して育ったり能力上げたりするわけじゃないんだから、どういう意味!?と思う。3軍のカードは永遠に3軍なのではないか…(1軍の戦略で必要になったら昇格したりするのだろうか)

 

 その他、当時あまり一般的ではなかったヤフオクで、金にモノを言わしてレアカードを次々落札し、クラス中の男子から総非難されていたハマハタ君。

古田かずま君のブルーアイズを窃盗未遂した●脇君など、そのブームの加熱ぶり、小学生男子たちの踊らされっぷりは留まることを知らなかった。

 

 僕も例に漏れず、ガチャガチャのカードダスでカードを収集するところから遊戯王を始めた。

 当時、サッカー少年団でキーパーをやっていて、「試合で無失点なら遊戯王箱買い」という父親との、巨額契約・もとい巨カード契約を糧に、3試合を無失点完封し、晴れて箱買いを実現した後、トゥーンデッキの使い手となった。

 

 トゥーンは無敵デース!!と叫んではいなかったが、トゥーンデッキを武器にのし上がり、山辺だいすけ君がリーダーの、遊戯王チームの幹部試験をパスし、見事幹部となった。(この制度マジで異常だったな)

 

2.

 そんな風に集まってはデュエル、集まってはデュエルを繰り返していた小4の時。

 

 僕が引っ越したことで家が近所になった、川口君と頻繁に遊んでいた。

 川口君とはサッカー少年団もクラスも一緒で、放課後も遊んだり、少年団の帰りもずっと喋っていたりと、とにかく仲が良かった。

 

 また、川口君は勉強もスポーツも出来て、(僕の描けない)絵も上手に描ける才能の持ち主だった。

川口君とは、お楽しみ会でコントをしたり、僕とけんた君のお笑いコンビ「長谷川&かん太」(僕が長谷川。本名と全くかかっていないけど芸名)でマネージャーを務めてくれたりと、いろいろなことを企ててはやっていた。

 

 そんな企ての一環で、ただただ遊戯王カードをやっていることにも飽き始めていた我々は、「俺らも遊戯王カードみたいなカードゲームを作ろうぜ!!!」という企画を立ち上げた。

 

 話が決まってから行動に移すまでが抜群に早い、テストステロン値の高かった僕らは、その日の放課後にはもう川口の家に集まって企画会議をしていた。

 

 どんなカードゲームにするか?ルールはどうするか?絵柄は?「オリジナルカードを作る」というアイデアがパクられないようにどう対策するか…などを、2~3時間話し合った結果

 

 僕らのカードゲームの名前は『にんていカード』に決まった。

にんていカードの主な特徴は以下だ。

 

  • ルールは基本的に遊戯王。攻撃表示・守備表示があって、ライフポイントがなくなったほうの負け。
  • +モンスターの技ごとにダメージ量が違うという、ポケモンカードのいいところも取ったルール
  • 他の人がアイデアをパクらないように、対策として、カードの裏には◯で囲った「にんてい」の文字が書いてある、これが本物の証!

 

というものだった。完璧だ…と思って二人でハイタッチをした。

 

3.

 テストステロン値の高い僕らは、早速カード作りに着手した。

遊戯王と同じように「名前」、「モンスターの絵」、「種族」があって、「攻撃力・守備力」、「技」、「効果」などの設定を作っていく作業はとても楽しかった。

二人で分担して、半数ずつぐらいカード作成をしたと思う。

 

そして、途中からモンスターを作ることにハイになった僕が、

「強いカードとかレアカードがあってもさ~遊戯王みたいにキラに出来ないじゃん?

 だからレアカードは、カードのサイズ大きくしようぜ!」という提案をした。

 

この提案は、すぐに受け入れられ、にんていカードに

 

  • 強いカード・レアカードはカードのサイズを大きなものにする

 

という新しい特徴が付け加えられた。

  

 その日と翌日で、カードが50種類ぐらい出揃った。故・プリンスもびっくり、驚異の多作具合である。

 1種類のカードが一つずつ、では遊戯王カードみたいにならないので、父親に許可を取り、実家のスーパーの事務所にあったコピー機を使わせてもらい、カードを量産した。

 

 コピーにより、各カード50種類×5枚、ぐらいの在庫が出来、手の丘の部分が痛くなるぐらいハサミで切りまくった。

ここまでの段階で、僕と川口は達成感に満ちあふれていた。

 

 そして、明日はとうとう、にんていカードのリリース日。感嘆と喜びに満ちたみんなの顔が目に浮かぶ。ここからが本番だ。

この『にんていカード』プロジェクトのワクワクは、長谷川&かん太の時よりも、そして、お楽しみ会でやった三人組のモグラのコントの時よりも、大きく勝っていて、期待にときめいた胸は破裂しそうなほどだった。

(続きます)