077 動物の赤ちゃんが好き <中>

(↓前回からの続きです)

yanakyo.hatenablog.com

 

『犬・トリ VS 俺』 - Round.2 -

 

4.

 カラスほどではないが、同じような理由で犬も苦手としている。

犬の佇まいとか、背中の流線型の感じとか、犬種がいっぱいな感じとかは凄く好きなのだが、とにかくあいつらも話が通じなくて危害を加えてくるのがコワイ。

 

 幼い頃に、クラスメイトの家に遊びに行って数時間吠えられたり、追いかけられたりした頃からずっと一貫して苦手だ。

こういう話をすると、犬好きな人は押しなべて熱量が高いから「そんなことないよ!」と犬の否定≒自らを否定された、ぐらいの剣幕で、僕の考えを諭して来ようとする人がいるのだが「いいからほっといてくれ!!」と原付で走り去りたくなる。原付、持ってないけど。

 

 しっかし、動物の赤ちゃんが好きだ。

コアラの赤ちゃん、見たことあるか!?!?!?可愛いから絶対見たほうが良い!!!!パンダの赤ちゃんを見逃したのは、動物の赤ちゃん好きとして一生の不覚だ。次にパンダの赤ちゃんを見るまでは死ねないね。

 

 リードをしないで犬を散歩させている人は本当に恐ろしい。

昔住んでいた家の近くに、いつも犬にリードを付けないで散歩させていたオジサンがいたのだが、ある時その犬がグワーッとこちらに身を乗り出してギャンギャンと吠えてきたことがあった。

 

 「うわー!!」と叫んでいる僕に向かってオジサンは、謝るでも犬を静止させるでもなく(へへぇ…元気でいいでしょ(照))みたいな笑顔でこっちを見ていた。いやいやいやいや!!!!!!!!!!!!!!!そういうことじゃないんだよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(照)じゃないんだよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 リードしないと、急に車道に飛び出したりして犬の身も危ないと思うんだけど、そこんとこどうなの!?!?!?!?!?犬のことを思うならリードを付けてほしいし、吠えたらみんなが「元気でいいですねー」って思ってるわけじゃないんだから、最低限すいませんねえぐらい言ってほしいものだ。

 

5.

 僕を決定的な犬苦手人間にしたのは、高2の夏休みに、同級生のやっちの家に遊びに行ったときの事件がきっかけだった。

やっちの家には、警察犬のように立派なドーベルマンがいた。(犬種にも全く詳しくないのでドーベルマンかどうか自信を持って言えないけど、とにかくそういう感じのシュッとしてて強そうで大きな犬だった)

 

 普段は犬小屋に繋がれており、せいぜい家に入る時にワンワン吠えられるだけなので、家に駆け込むことで、コワイけど何とか難を逃れていた。

しかし、その日はリードに繋がれておらず、あろうことか家の玄関に鎮座していた。

そして、アンチェインになったそいつは、いつもと同じような高い熱量でワンワンワンワンと僕に吠えてきた。

 

 情けない話だが、怖いから一回居間にやってくれないかなとやっちに伝えた。

やっちの回答は、YesでもNoでもなかった。「大丈夫だって!血統書付いてるんだから!」というものだった。

 

 自ら犬を飼った経験もない僕は、「そうかー血統書がついてるのかー…なら…」とはならなかった。

いや、現に吠えまくってるから一回居間にやるか犬小屋につないでくれないか、と再度交渉したが、やっちは「だーいじょうぶだって笑 血統書付いてるから!」と頑なだった。

頑ななだけならまだしも、「だーいじょうぶだって笑」と、何おかしなこと言ってんの笑 的ニュアンスまで入り始めた。

 

 ……こちらが変なことを言っている扱いになっている……一度も嘘をついていないのにも関わらず、オオカミ少年扱いである。しかも、僕にとって「血統書が付いてるから」ということが何の担保にもなっておらず、更にここまで吠えまくる所を見て、根本的に血統書が付いているかどうかすら疑わしくなってきていた。どちらかというとオオカミ少年はやっちだ。なんなら、玄関ではオオカミのような犬が吠え続けている。

 

 それ以降も2回ぐらい同じやり取りをしたが、やっちは「だから!だーいじょうぶだって笑 血統書付いてるんだから」と繰り返すのみだった。当時ペッパー君はこの世になかったが、ペッパー君でも今日びもっと多彩な返しをするのではないか。

 

 そんなやりとりのうちにやっちは、階段を駆け上がり、2階の部屋に行ってしまった。

 ポンコツペッパー君も欠いた僕は、やりとりすらする相手がいなくなり、とにかく埒が明かなかったし、もう家に入りたかったから、オオカミ犬が吠えまくっている玄関から正面切って入ることにした。

 

 僕が玄関に入ると、さっきまでワンワンワンワンだったのが、ワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンぐらいの熱量で更に吠えだすやっちの飼い犬。これは祭か!?!?

 いやーでも動物の赤ちゃんはかわいい。好きだわー。普通に稚魚とかもかわいいもんな。こぶたとか鹿の赤ちゃんもかわいい。大体すげーお母さんに懐いてるし。ディズニーキャラでもバンビのとんすけが2番目ぐらいに好きだからね。彼も赤ちゃんかな!?!?

 その咆哮と言わんばかりの吠え方に、ひるむどころか完全に身を半身にしながら、恐る恐るやっちの家に入った。

 

 次の瞬間!(世界まる見えのナレーション)

 そのドーベルマンが身を乗り出して、俺に襲いかかってきたのだ!!!!!!

あいつら、普段四足歩行してるけどすげー背でかいのな。更に身を乗り出してジャンプしていたからか、身長171cmの自分より遥かに大きく見えた。

「うわー!!!!!!!!!!!!!!!」とワンワンに負けないぐらい絶叫してしまった。

その直後に、あろうことか、ヤツは立派な犬歯で俺の手首を甘噛みしてきたのだった!!!!!

 

 急いで、やっち!!!!!!!!!!!!と大声で呼ぶと、ポンコツペッパー君は2階の部屋から階段までノロノロと出てきて「なした!?」と聞くではないか。

今、ぐわーって襲いかかってきて手首を甘噛みされたということを動転しながらも伝えると、驚きの答えが返ってきた。

 

 「そんなわけないじゃん!血統書付いてるんだから」

俺も我を忘れて、やっちが言い終わるか言い終わらないかのタイミングで「血統書がナンボのもんじゃい!!!!!!」と叫んでしまった。自然と亀田兄弟が憑依していた。あんなことは初めてだった。憑依系芸人の気持ちが0.1%ぐらいわかった。

 

 その後は普通に部屋でエロ本や漫画を読んで過ごした。

帰る頃には、その”血統書付きの犬”は犬小屋に繋がれていた。帰るときもちゃんと吠えられた。

 

 犬を飼っている人にとっては「噛んでくるのもコミュニケーションだよ」ということかもしれないが、もともと犬に苦手意識があるのに加えて、”噛まれる”なんて一番恐れていることだから本当に怖かった。噛む力があと10%強かったら動脈に貫通して死んでいたのでは!?!?!?とか考えてしまった。

 

それ以来凄く犬が怖くなった。多分アレ血統書ついてないよな!?!?!?!?!?!?

 

(続きます)