039 席替えが好き (前編)

『Mr.席替え』(前編)

 

1.

 席替えをしたい。

この間、『Mr.都市伝説 関暁夫』のことを考えていたときに、「席替え」という単語が脳裏に浮かび、「もう俺はこの先席替えをすることがないのか…」と気付きちょっとさみしかった。

 

 「席替え」という言葉には、「クラス替え」以上の魔力があると思っている。

 クラス替えは、いとこ同士を同じクラスにしないでおこうとか、問題児同士は同じクラスにしないでおこうという、先生側の政治が大いに関わっているのに対して、席替えはクジ引きという完全ランダムなシステムで決められるところが、ゲーム性もありアツい。

「視力が悪くて、黒板が見えない子は事前申告で手を上げて前の席に行く」などの最低限の固定要素はあるが、それ以外は完全ランダムである。

 

2.

 席替えのことを思い出すと「クラスの端の席のやつ同士がジャンケンをして、どちらサイドからクジを引き始めるか」というところからアツいバトルが始まっていた。

 

 端と端の代表者はみんなの期待を背負ってジャンケンをする。あの熱気はもはや合戦である。

 ジャンケンに負けたものには、血気盛んで15分休みにもドッジボールやサッカーをやりたがる系の男子たちから、罵声が飛ぶ。

 勝ったものには、男気を国民へ行動で示した、バーフバリ並みの称賛が待っている。(ここで”バーフバリばり”というダジャレと”小3だけに称賛”というダジャレを思いついたけどグッと堪えた。でも結局書いてる。あと小3と限らないし)

 たまたまクラスで端の席になっただけなのに、勝手にこんな重責を背負わされて、今思うと気の毒だ。

それも数奇なもので、端の席になったのも前回の席替えの結果によるもので、前回の席替えで背負った運命を次回の席替えのオープニングで清算していることになる。

 

 しかも、結果としてこのジャンケンに勝って、端のやつがクラスの一番乗りで席替えのクジを引いても、いい席になるとは限らず、教壇の一番前の席になって授業中寝たり友達と喋ったり出来なくなったりする。むしろ最初で選択肢が広いだけに、そういうダメな席が当たりやすかったりする。

こう考えると、席替えはつくづくデインジャーなゲームだぜ。

 

3.

 小学校のとき6年間ずっとうんこを漏らしすぎて、女子の隣の席になっただけで、その女子に大泣きされているやつが居たのだが、その時どんな気持ちだったんだろうと想像すると本当にかわいそうになる。

よく考えると12歳になっても、体質とかではなく単純に面倒くさがりでシモの処理が出来ず、それでもラブレターとかを送りまくってたやつだったから、しょうがないかと思う。

 

 後ろで漫画を読んでもバレない良い席が当たったら「掃除当番4回やるから交換して」と交渉を持ちかけたりするやつもいた。

4回という設定も絶妙で、ワンクールつまらない授業中に漫画を読める時間と、4回掃除当番をしないで放課後や家に帰って漫画を読める時間を天秤にかけるとすごく悩ましい。

 結局掃除当番をサボっている、と先生にバレることを恐れて交換はしなかった。

 交換の交渉に乗ったやつが、掃除当番がバレて怒られるどころか、「席の交換」という不正が発覚して席替え中に怒られているのを見て、良かった~と思ったのを覚えている。いつにもまして意味のない記憶だ。

 

(続きます)