009 パーティーグッズが好き

『一瞬でバカになれる』

1.

 パーティーグッズが好きだ。

東急ハンズや、ドンキホーテのテンガが売っているコーナーの手前にだいたいある、宴会芸的なコーナーに置かれているコスプレグッズやイタズラ用のグッズなどのあれだ。

 

 「勤務態度がなっていない」と注意するスーツ姿の上司の顔面に、鼻めがねがついていたらどうだろうか。

一気に滑稽に見え、自らがバカになることで、対等な目線から本当に心配してくれているのではないかと思える。この上司なら平の意見も聞いてくれそうだ、と思える。更に「お前だよ」というベタなツッコミもできるあたり最強のコミュニケーションツールになる。

 『お金は銀行に預けるな』『長生きしたければ股関節を鍛えなさい』など、常識の逆を言ったり意表を突くタイトルの新書・実用書が毎年ベストセラーになるから『良い上司になるには鼻めがねをつけなさい』っていう本を出そうかな、と思うぐらい。

 

2.

 パーティーグッズといえば、主に会社の忘年会や新年会で「お調子者でこの会社の中では喋れる・仕切れるから」とされていて、幹事などをつとめている人が”本日の主役”とかそういうタスキをかけているイメージが、個人的には真っ先に浮かぶ。

 それはまだいいのだが「その年流行った芸人のコスプレグッズ」などは、忘年会で芸人のネタの真似をしている=ひょうきんでユーモアのある自分、みたいな優越感に浸る人を増やし、それを見ている周りも「あいつはひょうきんだなあ。芸人の真似をするなんて!面白くないと出来ない芸当だぞ!!」とオリジナリティや人間性の死んだ空間を作り出す、ある種腐敗の温床となってしまうことがある点はデメリットであると思う。(芸人さんの収入源の一つになっていると思えば必要なのかもしれないが…)

 

 以前の職場の表彰式のときに、自分より年上の女性と数人の男性による、ブルゾンちえみのネタのコピーが急に始まりそれを逃げ場なくただただ見せられた時は本当に生き地獄だった。

何よりもそのコピーネタが終わった後、責任者的な人が「今後はこういうこと(面白いことという意味合いで)もやっていこうと思っているんで!」と笑顔で言ったときに、嫌すぎて映画『エイリアン』でエイリアンに寄生された乗組員のように、得体の知れない液体を吐き散らしながら絶命しようかなと思った。

 

 こういう人たちは、パーティーグッズを「自分のおもしろをブーストするための装置」だと思っているところがヤバイんだと思う。

人のことをとやかく言えるような立場ではなくブーメランとなる可能性を承知で言うが、その認識の時点で発想力が乏しくつまらない人なのではないか。パーティーグッズにその乏しい発想力を補うほどの力はない。

 

3.

 やっぱりお前も発想力が乏しいんじゃないのか、と言われそうだが、パーティーグッズは使用方法を誤らなければ、おもしろグッズになると思っている。

いかにフラットな気持ちで・あるいは思いっきり突き抜けたテンションで使用するかが大切なように思う。

以前、家に100均で買った「おもしろメガネ」という、ド直球な名前のメガネがあった。かけることで、誰でもおとぼけ外国人風のタレ目になるという代物だ。

 それを机の上なり、目につくところに置いておくと、大体の人は何の気なしに試しにそれをかけてこちらを見る。かなり何の気なしにかけるので、たいてい真顔でめちゃくちゃフラットな表情をしている。

そこに来ておもしろメガネが、周りのフラットな表情から浮き上がったように面白く見えてくる。たいてい酒を飲んでいることもあるが、そのおもしろメガネをかけておもしろじゃなかった人を見たことがない。たいてい写真を撮ってくれと言われる。なので、僕はおもしろメガネをかけた人の写真をたくさん持っている。

 本来、おもしろいでしょ~!?!?とかけるものではないのだ。まるで日常動作のように身につけるところにこそ、パーティーグッズの真価があるということをその時知った。

そこから何かあるとパーティーグッズを買って家に置いておくという、よもすればド滑り野郎のような収集癖を続けていた。パーティーの場には持っていかず、家に置いておくと、たいてい上述のようにみんなフラットに身に着けてくれる。

 

 僕の好きなお笑いコンビ、虹の黄昏はつかみからアクション本編(虹はコントのことをアクションと呼ぶ)に至るまでパーティーグッズを多用する。アクションのオチ自体がパーティーグッズのこともあって、全力のパワーで叫ぶところも含めてたいてい爆笑してしまう。

プロの芸人がフルスイングでパーティーグッズを使う乖離もまためちゃくちゃおもしろい。

 

4.

 そのような理由からパーティーグッズが好きで、本当にパーティーグッズでちゃんとウケている人種なので、ドンキホーテなどに立ち寄るとたいていパーティーグッズコーナーを見る。

 その年流行ったお笑い芸人のパロディ衣装は、”こういうことを今後もやっていこう”と思っていないので着たことがないが、チェックしているうちにあることに気がついた。

 

 こういったパロディ衣装の発売元は数多く存在するが、特に流通数が多く、商品のネーミングに特徴のある会社がある。

 

 それは『オガワスタジオ』という会社で、芸能人のマスクなどを販売しているのだが、恐らくあくまで”パロディグッズ”という路線で販売をしており、正規のライセンス品である様子はパッケージからは伺えない。

もしかすると裏で許可は取っているかも知れないが。無許可だったら不謹慎ながらそれはそれで面白い。

 そのため、名前に分かりやすく本家の名前を入れることが出来ないのか、連想させてネタ元をわからせるような商品名になっているのだが、そのひねり方がかなり絶妙でいい。

 

お笑い商品一覧−パーティーグッズの製造販売 株式会社オガワスタジオ Ogawa Rubber Inc-宴会マスク・忘年会マスク・フィメールマスク・ラバーマスク・着ぐるみ・かつらなどのかぶりもの

  • キャリアウーマン→ブルゾンちえみ
  • バブリーねぇさん→平野ノラ
  • ピコ太郎→パンチ太郎

あたりの連想しやすいものから始まり、

 

  • 本田圭佑←敬礼マン
  • スウィーツ王爺→ひふみん
  • みやぞん→ニコニコ兄ちゃん

というかなり連想が困難で雑なイメージのものもある。

 ホームページには載っていないが、オードリーがブレイクした年「ニヤケ男」という春日をイメージしたものもあった。これと「ニコニコ兄ちゃん」あたりの、リスペクトのない雑な路線が好きだ。

 

今後どんなネーミングの商品がオガワスタジオから出るか本当に楽しみにしている。今年なら「不意に登場男」とかかな。

 

※訂正 2018/10/10 「春日のマスクは"細目くん"ではないか?」という指摘を頂きました。ニヤケ男はなく、細目くんの商品ページが確認できましたので、訂正します。