061 比較対象を疑うのが好き

『比較対象を疑え!』

 

 昨日『スマホにはトイレの便座の10倍の菌がいる!?』みたいな見出しのニュース記事を読んだ。

中身を見ると、結局「スマホにはかなり菌が付着しているのは事実ですが、体に無害な常在菌がほとんどです」という内容の記事であった。

 

 にしても、タイトルだけを見ると「スマホってそんなに汚いの?」となって開いてしまう人が多数だと思う。

自分も最初はそう思った。けれど、少し時間が経ってから、むしろ「便座、めちゃくちゃ綺麗じゃない!?!?」という方に気持ちがシフトした。

 

 「え~!意外!!」と言わせるための定番の豆知識として、「歯医者はコンビニより多いんですよ~」という言い回しがある。自分も、歯科医師から最初にこれを聞いたときに、ベタに「え~!意外!!」と言ってしまった。

 

 それから数年して、髪を切っているときに「美容院はコンビニより多いんですよ~」と美容師さんに言われた。ここでも「え~!意外!!」と言うリアクションをしてしまった。

 

 更にそこから数年経って「寺はコンビニより多いんですよ~」という言い回しを聞いてまたバカの一つ覚えのように「え~!意外!!」と言ってしまったが、ここまで来たらコンビニが意外と少ないのでは!?!?!?!?!?

歯医者より少なくて、美容院より少なくて、寺より少ないんだったらそもそも多いものの例えでコンビニを出す方が不適切のように思う。

街中でトイレ探してコンビニ見つけようと彷徨ったら、「あ~また寺かよ!!!」って経験一回もないんだけど本当に寺のほうが多いの!?

 

 都会の街中にコンビニが分布していて、田舎のほうに行くとそれよりも寺が多いから、全国的に見た総数で寺が勝つっていうロジックなのか、都会田舎の区別なく全国中押しなべて寺のほうが多いということなのか、それすらもわからない。

何にしてもコンビニが意外と少ない方に驚くべきだし、もはや「意外」と思わせる言い回しで「◯◯はコンビニより多いんですよ~」は朽ち初めていると言っていいのではないだろうか。

 

 健康食品で「レモン◯◯個ぶんのビタミンC!!」と標榜しているものがあるが、レモンは果物のほうでもビタミンCが少ない方であると聞いたことがある。”酸っぱいからビタミン豊富だろう”というイメージを利用した巧妙な手口だ。

同じ理屈で「レタス◯◯個ぶんの食物繊維!」もレタスにあまり食物繊維が含まれていないことからよく使われる言い回しらしい。

 

 「計量するコップ」が小さければ、同じ水の量でも「コップ◯◯杯分!」の数値が大きくなるように、「計量するコップ」たる対象物を小さく設定しておけば大量に見えるというテクニックが日常多く使われている。

その方法論でいけば「東京ドーム一個分」よりも「田舎の公民館2000個分」のほうが大きく聞こえるし、「アライグマの赤ちゃんは、俺の100000000000倍かわいい」も成立してしまう。

(でも俺も携帯のモバイルバッテリーにリスのシールを貼ったり、意外とかわいいところがあるので、実際はアライグマの赤ちゃん比3倍ぐらいまでにスコア差を縮められるかもしれない。それはまた別のお話)

 

 これに気づいてから、こういう言い回しを聞く度に、むしろ「比較対象になっているほうが意外と◯◯じゃん!!」と、比較対象側を疑うようにしている。

「”コップに水が半分しかない”と考えるよりも、”まだ半分も水が残っている”という考えの方が得」という、ポジティブな人の例えがある。比較対象のほうに着目することは、この考え方にも似ているかもしれない。

 

だから、「意外と便座キレイじゃん!」と思って便座の上にお花を飾ったりするし、「お寺意外とたくさんあるから街中で死んでもすぐ供養してもらえんじゃん!」と思うし、「美容室めっちゃあるから街中で、最後マッサージしてもらうやつやってもらいたくなったらすぐやれんじゃん!!」と思える。

そういう人間に、君らもなれ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

最後感嘆符いっぱい付けて終わる時、大体終わり方に迷ってるときです。終わります。